folja
創作

地獄 あるいは恋

更新

大江健三郎は眠れない夜、英詩を翻訳したという。けれどもよく考えればあえて翻訳をする必要もないのだ。本棚から詩集を引っ張り出すのが億劫なら自分で書いてしまえばいい。程よく眠れた三篇。

序

これは2024年12月13日の夜更け前から書き溜めた、眠気を迎えるための詩篇である。つまりこれは眠気に捧げるための詩篇といっても差し支えない。眠気如きに捧げるものであるから、その中身はお察しである。手を加える気もない。

眠り

星が視えました。
わたくしがそこに居ました。
 わたくしが泣いて居ました。
荊の窪みの中で眠りながら。

誰か、いつか
 この星へ行けるかしら。
星が爆散して、
あの子があの子でなくなってしまう前に。

それまでは暖かに
 照らされていて ほしい。

地獄 あるいは恋

時時、地底はせり上がって来る。
概念が〈わたし〉を包み込む。
讃美歌をラジオで流しながら
ひとり街に残って
 時時むかしをなつかしむ。

約束

公園が閉鎖された日、一輪の白い花を渡して、もうここには戻らない、とふたり約束をした。ぽっぽと夕陽が落ちて二つに裂いた花の灯りでそれぞれのねぐらへ戻った。
朝日のほうが綺麗だったのだけれど、と我楽多に水を汲んで花を立てかけながらおもう。もう二度と夜は明けない。
からんと日付の変わるころには誰もが寝静まっている。今日の夜の地球は静寂だ。
かたつむりが滑った。音のない雨は初めてのことだ。

付

 起きたら三篇しかありませんでした。どうやらはやく眠れたらしい。どうしても手入れをしたいのはやまやまだが、眠気に捧げるものは眠気の訪れるそのときまでに書き終えるに限る。仕方なく、そのまま載せる。